JSAI2025で3件の発表を行いました

大阪国際会議場で 2025年5月27 ~ 30日 に開催された第39回 人工知能学会全国大会(JSAI2025)にて,大橋(D3),姜(D1),藤枝(M2)の3名が参加・発表しました.

基本情報

JSAIは,AI に関する日本最大の学会です.今年は,大阪国際会議場(グランキューブ大阪)+オンラインのハイブリッド形式で開催されました.

参加者数と発表件数は,それぞれ 4,922 人と1,178件で,いずれも過去最多でした.さらに,参加者の80%は現地参加でした.

招待講演

  • Shane Gu
    AIの未来:研究室から実世界へ – 能動的学習が拓く次世代ブレイクスルー
    Google Gemini プロダクトチームの Shane Gu 氏による,過去・現在・未来における,AI 研究への取り組み方についての講演でした.研究のインパクトを残す上では「それが正しい方向か」を考えることが重要で,その例として,彼が学生時代から取り組んできた代表的な研究テーマ(Gumbel-Softmax,sample-efficient deep RL,robotics など)や,これまでの AI 分野の時代遷移を紹介しつつ,短期的には最善でなくとも最終的にはスケールするような,長期的な目で研究テーマを見つけることの重要性が強調されました.さらに,これからの AI はオンラインで飛躍するという考えのもと,実際に AI プロダクトを世に出し,能動的に学習させていくことが重要になるとのことでした.
  • 栗原 聡
    バディAIがいる世界へ
    人工知能学会会長の栗原聡氏による講演では,AI が単なる道具だけでなく,人間と信頼関係を築く「バディ」となり得る,AI と人間の新たな関係がテーマとしてあげられました.講演では,AI 技術の発展がアカデミや企業における効率化,イノベーションに貢献する可能性を示されました.一方で,AI への過度な依存が人間の理性的な判断力の低下や思考力の減退を招くなどの課題も提起されています.こうした課題に対し,栗原氏は「バディ AI は人間の創造力を育む協力者である」と定義されており,その実現には,現実世界で AI が関与するための「身体性」が不可欠であるとの説明がありました.最後に,AI との共生社会を目指す上で,創造力を育む教育の重要性,そして日本独自の価値観に基づいた AI 開発などが提唱されました.

自身の発表について

大橋は,3日目のオーガナイズドセッション「知的対話システム」にて,タスク指向型対話システムに含まれる様々なモジュールを統一的に改善するためのコンポーネント Universal Post-Processing Network (UniPPN) を強化学習によって最適化する研究について紹介しました.

大橋 厚元, 東中 竜一郎

タスク指向対話システムにおける全モジュールの後処理の同時最適化 Proceedings Article

In: 人工知能学会全国大会論文集 第 39 回全国大会 (2025), pp. 3R1OS45–3R1OS45, 2025.

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姜は,3日目のポスターセッションにて,対話においてユーザの感情をリアルタイムに把握し,発話がない・少ない状況にも対応可能な,生体信号を活用した感情分類モデルの構築について発表しました.

姜 菁菁,郭 傲,東中 竜一郎

対話中の生体信号を用いた時系列モデルによる感情分類 Proceedings Article

In: 人工知能学会全国大会論文集 第 39 回全国大会 (2025), pp. 3Win5-55, 2025.

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藤枝は3日目のポスターセッションにて,ホワイトボードを用いてユーザとやり取りのできる対話システムの開発に向けた,人間同士のホワイトボードを使用した対話の収集とその分析結果について発表しました.

藤枝 佑喜, 東中 竜一郎

ホワイトボードを使用した共同作業タスクにおける対話の収集と分析 Proceedings Article

In: 人工知能学会全国大会論文集 第 39 回全国大会 (2025), pp. 3Win5-33, 2025.

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気になった発表

  • 三浦 辰志,時枝 大貴,岡田 将吾 (JAIST)
    メタ学習手法を用いた対話時のユーザーの感情推定
    マルチモーダル対話システムの構築においては,①マルチモーダルデータセットの収集コストの高さ,②ユーザの非言語情報の表出における個人差,という2つの課題が指摘されています.これらの課題を解決するために,少量のデータと少ない学習回数で新しいタスクに適応できる「メタ学習手法(Model-Agnostic Meta-learning, MAML)」が採用され,マルチモーダル感情し推定タスクに応用することで,その有効性が検証されました.限られたデータ環境でも,高精度な感情推定を可能にするアプローチであり,実用性の高い研究と感じました.
  • 高橋 聖弥1、岩田 伸治2、伊原 滉也1,2、加藤 昇平1 (1.名古屋工業大学、2.サイバーエージェント)
    現実世界の出来事に対するキャラクターらしい発話生成の実験的評価
    経験に基づく発話(経験発話)をキャラクターらしくすることは,現実世界をキャラクターと一緒に経験できるアプリケーションの実現のために重要ですが,感想が無個性であると経験発話のキャラクターらしさが低下します.そこで,感想をキャラクターらしくすることで,キャラクターらしい経験発話の生成を目指した研究です.実際に社会の中でLLMを使うことを想定した研究で,これからどうAIが使われていくかが感じられた研究でした.

終わりに

今年のJSAIは発表件数が初めて1000件を超え,過去最多を更新しており,人工知能という分野の盛り上がりを感じました.自然言語処理に関するもの以外にも興味深い発表が非常に多く,それらの聴講を通して研究へのモチベーションが大いに高まりました.また,我々の研究に対して多くの質問,活発な議論があり,今後の研究の参考になりました.

JSAIでは発表以外にも懇親会が開催され,同世代の研究者や企業の方とも交流する機会があり,大変充実した体験となりました.

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カテゴリー: 発表