M2の伊勢野が,シンガポールで2026年1月20日(火)~27日(火)に開催されたThe 40th Annual AAAI Conference on Artificial Intelligence (AAAI 2026)に参加し,併設ワークショップであるTheory of Mind for AI (ToM4AI) で発表を行いました.

AAAI 2026の概要
AAAIはAI分野におけるトップ国際会議の一つで,AIに関する研究全般の発表が行われます.AAAI 2026の論文投稿数は23,680件で,採択数は約4,167件でした(採択率:17.6%).

講演について
AAAI 2026 では計6件の講演がありました.ここではその内,今後の対話システムの発展に特に重要だと感じた2件の講演について紹介します.
- From Workflows to Water Coolers: AI That Can Navigate Human Nature(Yolanda Gil, University of Southern California)
AIを現場で役立つ存在にするには,単にモデルの性能を上げるだけでなく,人間の協働の仕方や暗黙知を扱える仕組みが重要だと主張しました.特に「ウォータークーラー会話」(休憩室での雑談)のような対話を通じて,人々が本当に何を必要としているかを発見できるAIの重要性を強調しました. - Small Data: A New Paradigm for the Next Generation of AI(Derek Haoyang Li, Squirrel Ai Learning)
AIの発展において「ビッグデータで学習し性能を上げる」だけでは限界があり,人間のように少量の情報(スモールデータ)から本質を掴んで学習できる枠組みが重要だと主張しました.スモールデータAIの実現には,正誤だけでなくより多くの情報を含む多次元データの収集と,専門家が作成した質の高い少量データからの学習が鍵であると提示しました.
ToM4AIの概要
ToM4AIは人の心を推論する能力であるTheory of Mind(ToM)に関するワークショップです.人工知能・生物知能におけるToMや,ToMに基づくAIエージェントの設計・開発・評価に関する発表が行われます.ToM4AIの発表件数は講演が3件,口頭発表が6件,ポスターが50件でした.
ToM4AIの講演について
以下は,3件の講演の概要です.
- Maarten Sap, Oxford University
LLMは一見自然に会話できているように見えても,暗黙的な発言を理解することが難しく,必要な確認質問を行わないために対話が破綻しがちであると指摘しました.LLMをベースとしたエージェントを構築する際には,暗黙的な了解や直接観察できない他者の心的状態をデータセットに明記して学習させることで,エージェントがより高度な対話を実現できることが示されました. - Geoff Bird, Bar-Ilan University
ToMの評価において,「できる/できない」という離散的な評価ではなく,「一部はできる」という連続的な側面を評価することの重要性を述べました.既存のToMベンチマークでは,ToMの能力を正解率などのスコアで確認することが多いですが,単に正解率を見るのではなく,「LLMにとって何が難しいのか,どこが難しいのか」に目を向けることの重要性が説明されました. - Sarit Kraus, Carnegie Mellon University
LLMを人間と協働する存在として活用する際に,どのような点に注目して設計すべきかについて議論されました.現状のLLMの協力能力を上げるためには,相手の行動を予測するToMよりも,コミュニケーションを通じて相手の行動を変えさせる能力が重要であると主張されました.
自身の発表について
伊勢野は,機械翻訳によってToMベンチマークを作成した際に,翻訳エラーがどのようにベンチマーク結果に影響するかについて研究発表を行いました.結果から,正確性に関わる翻訳エラーがToM評価結果に大きく影響することを明らかにしました.
ワークショップの参加者からは,文化の差などによって,LLMがToMの問題を解けなくなることがあるかなど,言語の違いによるToMの違いについて多く質問され,議論を交わすことができました.
Investigating the Effects of Translation Quality on LLM Performance in Machine-Translated Theory of Mind Benchmarks Proceedings Article Forthcoming
In: In Proceedings of the 1st Workshop on Advancing Artificial Intelligence through Theory of Mind (ToM4AI), Forthcoming.

おわりに
AAAIは今まで自分が参加した会議で最も規模が大きく,発表件数の多さや分野の多様さには圧倒されました.また,ワークショップではTheory of Mindについて研究している多くの研究者と意見を交わすことができ,今後の研究につながる様々な知見を得ることができました.
会議の合間にはマーライオンやマリーナベイサンズを見に行ったり,シンガポール名物のチキンライスを食べたりと楽しく観光することもでき,非常に充実した学会参加となりました.


