M2の鈴木とM1の津田が,近畿大学東大阪キャンパスで2026年2月27日(金)・28日(土)に開催されたHAIシンポジウム2026で発表を行いました.
学会について
HAIシンポジウムは,ヒューマン・エージェント・インラクションを扱う国内会議です.発表件数は口頭発表が36件,ポスター発表が82件ありました.


自身の発表について
鈴木は,短期的および長期的な戦略を組み込んだ接客対話システムの構築について発表しました.接客対話データを収集して店員の発話に戦略アノテーションを付与し,それらを短期・長期・定常の3種類に分類したうえで,複数の時間スケールの戦略を使い分ける対話システムを構築しています.人間との対話実験および第三者評価の結果から,とくに長期戦略が寄り添いや理解しやすさの面で有効に働く可能性が示されました.
短期的および長期的な戦略を組み込んだ接客対話システムの構築 Proceedings Article
In: HAIシンポジウム2026, pp. P1-5, 2026.

津田は,日本語 Full-duplex 対話モデル J-Moshi を拡張し,発話と身体動作をリアルタイムに同時生成するマルチモーダル対話システムの構築について発表しました.姿勢情報を離散トークンとして音声・テキストと統合的に学習することで,発話と同期した身体動作の生成を目指しています.予備的な実験では,同時生成そのものは実現できた一方で,音声品質の低下や動作の不安定さといった課題が明らかになりました.
日本語Full-duplex対話モデルの拡張による発話と身体動作のリアルタイム同時生成に向けた取り組み Proceedings Article
In: HAIシンポジウム2026, pp. P2-34, 2026.

企画セッション
2日目には企画セッションがありました.本セッションでは,2名の先生による講演の後,両者によるパネルディスカッションが行われました.
- 山田 誠二 先生 (神奈川大学), 小野 哲雄 先生 (京都橘大学)
HAI研究で我々が目指してきたものとこれから目指すもの
HAIシンポジウム開始20年の節目として,HAIの原点を振り返るとともに,今後の方向性についても議論がなされました.講演では,HAIシンポジウムが始動した当時のマルチエージェント研究において「人間が入っていない」ことへの問題意識があり,現実の利用環境には必ず人がいる以上,人間とAIが混ざるヘテロジーニアスな系を扱うべきだと考えたのが出発点だったと紹介されました.また,AIだけでなく人間側も含めて捉える認知モデルの重要性や,「心が通う瞬間」を実感できるようなインタラクションを設計する方向性についても言及されました.パネルディスカッションでは,流行の手法(LLMなど)に飲まれず,主流から距離を取りながら独自の方法論を磨いてほしい,というメッセージが示され,強く印象に残りました.
気になった発表
- 宇治川 遥祐, 高汐 一紀 (慶応義塾大学)
実店舗の集団インタラクションに向けた出没自在エージェントの構築:集客と注視のトレードオフを考慮した身体有無の動的切り替えシステム
実店舗における商品推薦では,身体を持つエージェントは通行人の注意を引きつけやすい一方で,その身体自体が商品情報への注視を妨げてしまうというトレードオフがあります.本研究ではこの課題に対し,集客時には身体を出現させ,商品説明時には身体を消失させる「出没自在エージェント」を実装しています.特に,家族連れなど複数人でのインタラクションにおいて,同行者の注意も商品へ向けやすくするという視点が興味深く,実空間でのエージェント設計を考える上で面白い研究だと感じました. - 気吉田 笙吾, 河村 竜幸, 中西 英之 (近畿大学)
接客ロボットの振り返り誘発発言による陳列商品への興味の促進
実店舗において,接客ロボットが来店者の視界外にある商品へ注意を向けさせることで,商品への関与がどのように変化するかを検討した研究です.京都市内の七味専門店でフィールド実験を行った結果,背後の商品への振り返りを促す発話によって,ロボットへの接近行動や推薦商品の接触行動が増加しており,ロボットが周囲環境を理解して主体的に働きかけているように知覚される可能性が示されています.視界外の商品へ注意を向けさせるという着眼点が面白く,実店舗での接客ロボットの可能性を感じる研究だと思いました.
参加してみて
鈴木です.ポスターセッションでは,接客という分かりやすいテーマであるためか,多くの人が立ち止まり,システム設計から対話とは何かまで非常に深い議論をすることができて,大変有意義な時間になりました.また,人間とAIの共生という共通のテーマに対し,様々な方向性から行われた研究発表を聞くことができ,自分が触れてこなかった領域の研究も拝聴することができたため,大変勉強になりました.


