HAI2023で発表を行いました

M1の望月です.望月,D1の山下が,スウェーデンで2023年12月4日(月)~7日(木)に開催された The Eleventh International Conference on Human-Agent Interaction (HAI 2023) で発表を行いました.HAIはヒューマン・エージェント・インタラクションに関する国際会議です.

基本情報

今年のFull Paperの投稿数は111件と過去最多でした.採択数は40件で採択率は36%でした.アジア・ヨーロッパ・アメリカと多くの地域から投稿され,日本人著者の論文も数多く見られました.今年は現地参加のみで参加者数は190人程度でした.参加者数も過去最多とのことでした.

基調講演

1日目と2日目に1件ずつ基調講演がありました:

  • Tony Belpaeme (Professor at Ghent University, Belgium. Visiting Professor of Cognitive Systems and Robotics at Plymouth University, The UK)
    Is the autonomous social robot within reach?
    人間とコミュニケーションが可能な実体を持つロボット: social robotに関する講演でした.子供の言語学習やセラピーへのsocial robotの適用を試みた実験の紹介がありました.マルチモーダルの組み合わせなど取り組むべき課題は多く存在するものの,GPT-4などのLLMを適用することで自律的なsocial robotは実現できると断言されていた点が印象的でした.
  • Elisabeth André (Full Professor at the University of Augsburg, Germany)
    Social Signals as a Facilitator of Human-Robot Interaction
    social robotの構築における課題に関する講演でした.具体的なトピックとして,マルチモーダルな振る舞いの強化学習と音声合成に関する取り組みの紹介がありました.ロボットの音声が見た目・タスクにマッチしていることが重要であるとして,音声合成のパラメータをそのロボットにマッチするように変化させていくアルゴリズムを提案されており,音声のジェンダーがタスク性能やユーザの印象に与える影響について述べられていた点が興味深かったです.

発表について

望月は,1日目のSession 1にて,大規模言語モデルによる高度な案内対話が可能な自律対話ロボットと遠隔操作システムを用いて,海遊館の運営する生き物のミュージアム「ニフレル」にて複数人同時対話の枠組みを検証した約1ヶ月の実証実験の結果及び分析について発表しました.発表では,特に大規模言語モデルを適用した際にどのような対話が行われ,どのような介入が生じるのかについての分析結果を報告しました.質疑応答では,GPT-4の活用の展望や,大規模言語モデルを利用するメリットに関する質問を受けました.

Shota Mochizuki, Sanae Yamashita, Kazuyoshi Kawasaki, Reiko Yuasa Tomonori Kubota, Kohei Ogawa, Jun Baba, Ryuichiro Higashinaka

Investigating the Intervention in Parallel Conversations Proceedings Article

In: HAI '23: Proceedings of the 11th International Conference on Human-Agent Interaction, 2023.

Links | BibTeX

山下は,3日目のSession 9にて,上述のニフレルにおける実証実験における,対話ロボットを遠隔操作する際の対話要約の効果について発表しました.この研究では,2,000回以上の介入を分析し,対話履歴よりも対話要約を参照して介入する方がお客様の満足度が高いことを明らかにしました.質疑応答では,対話ロボットを遠隔操作することで解決できる課題や,実験を今後どのようにスケールさせていくのか,といった質問を受けました.

Sanae Yamashita, Shota Mochizuki, Kazuyoshi Kawasaki, Tomonori Kubota, Kohei Ogawa, Jun Baba, Ryuichiro Higashinaka

Investigating the Effects of Dialogue Summarization on Intervention in Human-System Collaborative Dialogue Proceedings Article

In: HAI '23: Proceedings of the 11th International Conference on Human-Agent Interaction, 2023.

Links | BibTeX

クロージングでは,Best Poster, Best Paperの発表がありました.望月の論文がBest Paper Award Nomineeに選ばれ,賞状をいただきました.

なお,ニフレルでの実証実験の成果については,以下のニュースリリースもぜひご覧ください.
https://www.nagoya-u.ac.jp/researchinfo/result/2023/12/ai-lab.html

その他

1日目の終わりには,Lucia Traditional Celebrationが行われました.北欧諸国を中心として,12月13日がSaint Lucy’s Dayというキリスト教の祝日とされているそうで,Saint Lucy’s Dayに行われる伝統的な式典の1つであるLucia Processionを披露していただきました.Lucia Processionとは,聖ルチアに扮した女性を先頭にサンタルチアなどを歌いながら行進する式典であり,とても幻想的でした.

参加してみて

望月にとっては,英語による発表は初めてであり緊張しましたが,スライドの写真を撮っている方も多く,発表後に直接質問に来てくださった方もいたりと,多くの方に興味を持って発表を聞いていただけたと思います.また,Best Paper Award Nomineeに選んでいただき,実証実験での成果を高く評価していただけた点は非常に嬉しかったです.

会議の合間には,ヨーテボリの観光スポットであるハーガ地区とリセベリ遊園地に行きました.ハーガ地区にはおしゃれなショップやカフェが立ち並んでおり,名物のKanelbullensというシナモンロールをいただいたり,お土産を買ったりして楽しみました.リセベリ遊園地では,クリスマスマーケットが開催されており,綺麗なイルミネーションのもと,様々な出店が並び賑わっていました.

会場ではポスター発表やコーヒーブレイクを通して他の研究者の方と交流することができ,非常に良い経験となりました.今後は今回の論文で明らかになった課題の解決に取り組み,再び学会で発表できるよう研究に励みたいと思います.なお,来年度のHAIはイギリスのウェールズで開催予定とのことです.